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執筆者の写真髙野

大学受験で推薦・AOを目指す子達に知ってほしいこと

先日、推薦・AOについて、それを狙っている生徒・保護者の方と話をした際に、お伝えしたことを備忘録として書いておきたいと思います。


1.学校内で良い成績を取っている(評定平均が高い)=基礎学力が高いではない

学校の成績評価というものは、基本的に学校内で行われる定期考査の結果や、各教科担任の先生方から見た授業態度等を加味する形で行われます。


この際、高校では絶対評価が中心となっているので、成績は何人に10をつけても構いません。相対評価で成績をつける中学校とは異なりますので、成績のつけ方自体は甘めになることもしばしば起こりえます。


例えば、教え子の一人が通っている、とある私立高校では、成績を定期考査の点数で5(81〜)、4(61〜80)、3(41〜60)2(21〜40)、1(〜20)のように評定を割り振っています。


こうした学校では、平均点がたとえ80点の点数であれ、30点の点数であれ、85点を取っていれば5がつきます。その逆もしかりです。


すると、平均点が80点の定期考査であれば、5をもらえる子がどれだけいるかは想像がつくことだと思います。


生徒達が各教科の学習到達度として、どの学校であっても到達していなければならない水準を計測するのに適切な問題の質・量に設定がなされたテストにおいて、平均点が80を超えていれば大したものなのですが、現実はそうはなりません。


というのも、各学校は既に高校受験等を経て似通った学力水準の子達が集まっているため、学力上位〜下位の、どの学力水準の生徒達にとっても共通する学習到達度に設定した定期考査テストなどは行えないからです。


これは、学校内においても当てはまります。学力別編成クラスを設けていたり、コース別制度を取り入れているような学校では、生徒達の間に学力の違いがあるため、また、担当する先生方によって作成される問題が異なるため、全く同一の問題を解くことは中々あり得ません。


それなのに、つけられた成績自体は全く同じものになってしまいます(難易度が高い考査で高得点を取った生徒と、難易度が低い考査で高得点を取った生徒の成績は同じです)。


比較的起こるのが、こうした結果から実際は学力が高いとは言えないのに、3年間の評定平均は高いという事態です。


例えば、どの模試でも良いですが、模試の点数は平均にも届かないぐらいに悪いのに、評定平均は4.5以上を持っているといった生徒は多々います。


もちろん、学校内の定期考査がどういうものであれ、それできちんとした結果を出した上で、評定平均を高い水準で3年間維持してきたという努力は評価に値します。


しかしながら、それによって基礎学力があるとは判断できません。基礎学力があるとみなせるのは、少なくとも私の私見で大学入試に関して言えば、旧センター試験(共通テスト)で80%近くの得点をすることができる状況でしょう。言い換えますと、評定平均は、あくまでその子が所属している学校内での努力を示すものではあっても、学力を示すものではないということです。


2.推薦(・AO)は評定平均の基準を満たしていれば、理論上どこでも受けられるが…

大学を推薦(・AO)で受験する際に面白いのは、大学側が評定平均の数値を示しているに留めていることです(当たり前ですが、高校の学力階層の違いは表面上考慮しない方針となっています)。


また、近年ではペーパーテストだけに留まらず、多角的な評価を行っていこうという観点から、AO入試が顕著ですが、評定平均よりも、課外活動など特筆すべき事項を重視する傾向も見られます。


ですので、大学受験では評定平均の基準さえクリアしていれば、または、クリアしていなくとも、課外活動などで特筆すべき事項があれば、偏差値上位大学でさえも受験することは可能です。


所属している学校がどの学力水準にある学校かは、表面上は全く関係ないのです。


しかしながら、受験することは可能であっても、評定基準を設けている大学側が、果たして学力上位校の評定平均4.5と学力下位校の評定平均4.5を同一視するかと言えば、当然疑問の声が上がることと思います。


特筆すべき事項に関しても、仮に同水準の特筆すべき事項(資格試験でも、部活動の成績でも)を持っている生徒が2人いたとして、人物像もほぼ同評価であった場合、学力上位校の生徒と学力下位校の生徒であれば、どちらを取ろうとするかと問われれば、前者になる可能性が高くなるでしょう。


3.推薦・AO組と一般入試組には学力に差がある

それでも、推薦・AOに向けて懸命に努力を行い、志望校に入学できればしめたものです。例え、一般受験であればその志望校に合格することが難しかったとしても、自分のそれまでの努力の結果として築き上げてきた評定平均や課外活動などで志望校に受かったことは、立派な結果で否定されるものではありません。


ただ、注意したい点があります。一般受験であれば合格することが難しかった志望校ということは、学力を純粋に試すペーパーテストでは太刀打ちできない大学であったということの裏返しです。


大学入学後は、自分では太刀打ちできなかった一般入試をクリアしてきた子達と一緒になります。


この時に問題が生じます。それは、推薦・AO組と一般入試組の学力差です。この学力差は大学入学後、大学の講義を履修し、学んでいく中で痛感させられることとなります。


同じ授業を受けているはずなのに、理解度が違う。


同じ授業を受けているはずなのに、前提としている知識が違う。


同じ授業を受けているはずなのに、…etc.


4.大学の成績(GPA)の良し悪しが在学中の自分の可能性や卒業時の進路に響く

こうして一般入試組との学力差がある状態でいると、大学に通っていて卒業に必要な単位の修得自体はなんとかできても、成績が芳しくないといった事態が生じます。


正直、大学は大卒の資格を得るためだけに通っているので、卒業さえできれば良いので、単位さえ取れれば成績は気にしませんという学生は結構います。


ところが、ここに盲点があります。


大学の成績が良い(GPAが優れている)ことによって、メリットが多々発生するからです。


ちなみに、大学の成績は4段階で、A(秀)=4,B(優)=3,C(良)=2、D(可)=1です。取得した単位にはこれらの4段階評価が行われ、それらを合算してGPAという評定平均をつけます。


では、どんなメリットがあるのか。以下に簡単に示しましょう。


①留学を行おうとした時に交換留学制度を活用できる


②学生支援機構の1種奨学金の免除申請ができる


③学校独自、または財団奨学金などの給付奨学金に応募し

 て支援を受けることができる


④大学院に進学しようとした時に、困らない


⑤就活の時にアピールポイントになる


といったところが挙げられます。


①について。交換留学制度を使えば、在学中の学費以外は余分に留学先の授業料を支払う必要がなくなります。


もし交換留学を使用できないと、私費留学という形になり、在学している大学に学費を払いつつ(仮に休学しても一定のお金は払います)、留学先にも自分で授業料を支払う必要が出てきますので、膨大な費用が発生します。


②について。以外に知らない人が多いので注意です。学生支援機構の奨学金は貸与奨学金であり、卒業後は返済義務が生じますが、1種奨学金には成績優秀者のみが可能となる免除申請制度があります。


この免除申請制度が適用されると、卒業までに借りた1種奨学金が全て免除となります。1種奨学金は私大の自宅外通学ですと、4年間で307万近く借りるわけですが、これが帳消しになります。


③について。こちらもあまり知られていないのですが、大学内外で成績優秀者向けの給付奨学金が結構あります。これは、2020年に導入された学生支援機構の給付奨学金とは全く別のものです。


この学校内外の奨学金は、ありがたいことに学生支援機構の奨学金と併用可能です。


学校内外の給付奨学金と合わせて奨学金をもらうことで、学生時代に学費のためにアルバイトを必死になって行うといったことをせず、存分に学生生活に没頭することが可能となります。


④について。大学院に進学する際、学部時代の成績を見られることがあります。もちろん、それだけではなく、研究計画書、大学院の試験や面接なども評価対象ですので、それだけで決まることはないのですが、それでも学部時代の成績は大切です。


いや、大学院に進学することはないから大丈夫なんて発言もありますが、今は生涯教育時代と言われており、いつ何時大学院に進学するかもわかりません。ましてや、大学院が海外という可能性だってあります。


海外の大学院は容赦なくGPAが大切です。その時に、推薦状や研究計画書がしっかり書けている。語学基準や大学院進学向けの共通テストGREなども基準スコアを突破している。しかし、GPAが足りないので厳しい、といったことになると悪夢となります。


⑤について。近年、就活では、在学時の成績の提出を求めてくる企業があります。もちろん、それだけで採用の可否を決めるわけではありませんが、あまりに成績が芳しくないと、それが一つのツッコミ要素になる可能性はあります。逆に、在学時の成績が優秀であれば、それは学部時代に真面目に学業に取り組んだということの証になりますし、積極的にアピールすることが可能となります。


ましてや、近年では、大学に入学する学生の半分が推薦・AOとなっていて、各大学内で推薦・AO組の学力が低くて困るといった声も上がっています。このため、噂ではありますが、入学時に推薦・AOで入ったのかどうかを確認する企業もある、といったまことしやかな話さえあります。


その中で、在学時の成績が優秀であれば、そうした噂をものともせずに就活をすることができます。


5.推薦・AO組は通っている塾・予備校を合格後もやめてはならない。継続して大学入学までに一般受験組を凌ぐレベルで猛烈に勉強すること

最後に、推薦・AO組がしばしば陥るケースを話します。


それは、推薦やAOに受かった後に、通っている塾、予備校や家庭教師等をやめてしまうことです。これは大変にもったいない。受験は上述したように、受かってからが大切です。


一般受験組との学力差を埋め、大学入学後では成績をきちんと良いものにして多くのチャンスを得るためにも、塾、予備校や家庭教師等を継続して学習をしてください。


お金がかかるから、一般受験受けないならあとは自分で取り組んでも…


といった声がありますが、それでお金をケチる、または独学になっていって、大学入学までに思ったよりも学習が捗らなかったという話はよく聞きます。


また、大学側が推薦・AO向けに学力差を埋める課題を近年では出してきますが、これも単にこなすだけに留まってしまっているケースが多々発生しています。


それだけではありません。大学側が用意している課題では、学力を伸ばすのに適切な課題設定がなされていないこともあるのです。


だからこそ、口を酸っぱくして言いますが、合格後は余程家庭の事情等で通う余裕がないといったことでない限りは、一般受験組と同じように、これまで通っていた塾、予備校や家庭教師のもと、学習に取り組んでいってほしいと思います。















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